2020年からにわかに「昆虫食」というものが流行りだしてきました。
なかでも「食用コオロギ」が高タンパクで食べやすいと言われており、「無印良品」がコオロギせんべいを販売するなど、大手企業の参入も伺えます。
しかし実際のところ、食用コオロギにはどういった良い効果があるのでしょうか。
本当に良い効果がないと、あんな見た目では積極的には食べたいと思いませんよね。
本記事では食用コオロギのメリットやデメリットなどを中心に、詳しく解説していくので参考にしてみてください。
2021年の今、なぜ食用コオロギが注目されているのか
それには世界的な飢餓問題や、環境問題、SDGsと呼ばれる世界的な取り組みが背景にあります。
地球環境に与えるダメージが少ない
食用コオロギは牛や鶏などの家畜に比べ、地球環境への負荷がとても小さいです。
必要な餌は牛の5分の1以下、水は5,500分の1で十分で、牛よりも負荷の少ない鶏でも、必要な水が600分の1程度で済みます。
体重1 kg あたりの温室効果ガスの排出量も限りなく少なく、牛が排出する量の28分の1とも言われています。
コオロギ | 牛 | 鶏 | |
餌 | 1.7kg | 10kg | 2.5 |
水 | 4L | 22,000L | 2,300L |
温室効果ガス | 100g | 2,800g | 不明 |
地球環境への配慮が問題視され始め、エコバッグが有料になったなどのニュースはとても身近です。
しかし世界的にはエコバッグなどの資源の無駄遣いと並行して、家畜などが与える地球環境への負荷も問題視され始めているのです。
人間の健康にも良い
コオロギは健康にも良いと言われており、コオロギは身体の65%がタンパク質、20%が脂肪、残り5%が繊維でできています。
そのためたった1匹で、とても多くの動物性タンパク質を摂取できるのです。
またコオロギにはタンパク質だけでなく、ビタミンB12やアミノ酸、カルシウムなども含まれています。
ビタミンB12は疲労回復や体力低下の予防になり、1日の必要摂取量は2.4μgですが、コオロギはたった100gで5.4μg摂取できます。
飼育するのが簡単
コオロギは牛や豚と違い、飼育するのがとても簡単です。
牛や豚などの家畜を飼育しようとすると広大な敷地が必要になり、簡単には行えずどうしても地域や場所が限定されてしまいます。
しかしコオロギは体の大きさも小さく場所を取らないため、たとえ都会でも飼育するのが簡単です。
必要になってくる餌や水の量が少ないことも影響していますね。
そうした飼育のしやすさも、コオロギが注目されている大きな理由の1つなのです。
世界的な取り組み「SDGs」にも関係している
最近になって、「SDGs」という言葉を聞くことが増えた人も多いと思います。
飲食店にも掲載されるようになってきており、上記画像のようなものを目にする機会もあるでしょう。
SDGsとは、世界的全体で取り組んでいく「持続可能な開発目標」で、2015年に採択された17個の国際目標のことです。
その中でも「2」「13」「15」の目標に該当しているのが食用コオロギ、いわゆる昆虫食です。
3つの目標すべてに当てはまる食用コオロギは、現在世界全体として取り組む必要のある、大きなプロジェクトとも言えるでしょう。
コオロギを食べるメリット・デメリット
地球環境に優しく世界的に取り組まなくてはいけないことは分かりました。
しかしコオロギを食べることに関して、具体的なメリット・デメリットは知っておきたいですよね。
- 高タンパク低脂質
- タンパク質以外の栄養価も高い
- 地球に優しい
- 食用コオロギは価格が高い
- 見た目が気持ち悪い
ここでは3つのメリット、2つのデメリットについて解説していきます。
高タンパク低脂質
まず高タンパク低脂質なコオロギは、健康的な食品でダイエットなどの役に立ちます。
コオロギはスナックなどのお菓子に加工するのも簡単で、それこそ無印良品が販売している「コオロギせんべい」が代表的ですね。
高タンパク低脂質なつまみになるので、少し口寂しいときなどにもとてもおすすめ。
また素揚げで塩をまぶせばお酒のおつまみにも最適です。
コオロギせんべいについてはコオロギせんべいはエビ味!口コミや気になるタンパク質量を調査で詳しく解説しています。
タンパク質以外の栄養価も高い
食用コオロギについて調べたらタンパク質の多さをよく目にすると思います。
しかしコオロギがすごいのはそれだけでなく、他の栄養価も高いところにあります。
鉄やマグネシウム、アミノ酸などが含まれており「スーパーフード」とも呼ばれるほど、完成された食品です。
1匹の大きさが小さいため必要な栄養素を摂るには量が必要ですが、毎日少しずつでも不足している栄養が摂れるなら素晴らしいですよね。
地球に優しい
これは人体に直接影響するメリットではありませんが、やはり地球環境に優しいのは注目するべき大きなメリットです。
飼育場所の拡大や、水・餌の確保など、人口が増えている現代では、かなりの高負荷が環境にかかっているのは想像に難くないです。
コオロギを生活の一部に入れるだけでも、環境問題に貢献できていると思うと、やる気も上がります。
食用コオロギは価格が高い
ここからはデメリットになりますが、食用コオロギは現状どうしても価格が高くなってしまいます。
まだ一般的に浸透していないため、生産している企業が少なく、購入する人も少ないため価格を上げなければいけないためです。
本当は価格を下げて一般的に広めていきたいところですが、需要と供給のバランスを考えるとどうしても難しいところ。
健康を考え購入を検討していても、金額的に手を出せない人も多いでしょう。
見た目が気持ち悪い
シンプルに見た目が気持ち悪いのもデメリットと言えますね。
やはりどう見ても食欲をそそる見た目ではありません。
そのため初めに手を出すハードルが高く、浸透しない原因になっています。
コオロギせんべいのように加工すれば悪くはないですが、実は加工する過程で栄養素が減ってしまうこともあります。
きちんと恩恵を受けようと思うなら、やはり素揚げなどのほうがいいでしょう。
コオロギなんか食べて身体に害はないの?
どれだけ健康に良いと言ったところで、所詮は虫。コオロギなんか食べて本当に身体に害はないのでしょうか。
食用に飼われたコオロギは成分も違う
昆虫から移される病気というのはとてもたくさんあります。
しかし食用のために飼われたコオロギには、そういった病気などを発症するリスクはありません。
国際連合食糧農業機関(FAO)でも以下のように記されています。
昆虫が他の食材のように衛生的な環境で扱われる限り、病気や寄生虫が人間に伝染された事例は知られていません。
引用:FAO 昆虫の食糧保障、暮らし そして環境への貢献
昆虫が病気をもたらすのはそこら中に転がっているあらゆるものを食べ、菌に侵されているからです。
しかし食用に飼育されているコオロギは、きちんと衛生的な場所で、食料も専用のものを与えられているため安全です。
甲殻類アレルギーの人は注意!
コオロギ本体による直接的な害はありませんが、コオロギが持つアレルギー反応はあります。
コオロギにはエビやカニなどと類似している成分が含まれているため、「甲殻類アレルギー」を持つ方は控えてください。
またタンパク質を主体とする食品にアレルギー反応を示す方も、食べるのは注意した方が良さそうですね。
無印良品の「コオロギせんべい」が話題の火付け役に!
ここまで食用コオロギに関する情報を解説してきました。
ここで少し食用コオロギが広まる火付け役となった、「コオロギせんべい」にも触れておきましょう。
コオロギせんべいは無印良品が販売している製品で、今後の食料確保や環境問題への対策として、開発されました。
コオロギせんべいに使われている食用コオロギは、徳島大学で研究されている「フタホシコオロギ」と呼ばれる品種です。
主に沖縄や奄美大島に生息すると言われており、最も食用に適したコオロギだと研究でわかっています。
「えびせん」のような味がすると言われており、見た目もせんべいであることからSNSを中心に人気です。
コオロギせんべいについてはコオロギせんべいはエビ味!口コミや気になるタンパク質量を調査で詳しく解説しています。
食用コオロギを使った食べ物おすすめ5選
食用コオロギといえば「コオロギせんべい」だと思われがちですが、実際にはとても多くのコオロギを使った食べ物が発売されています。
ここではその中でも食べやすいコオロギ食品について紹介していきます。
コオロギラーメン
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000051705.html
コオロギラーメンは「ANTCICADA」という企業が開発した昆虫食で、「ラーメン凪」との共同開発によって生まれました。
赤坂サカスや日比谷音楽祭などのイベント出展を中心に販売しており、毎回完売という人気ぶり。
現在は通販サイトでも購入ができるので、食べてみたい方はぜひ。
コオロギラーメンについてはコオロギラーメンは美味しい?食べられる場所や通販での購入方法を紹介で解説しています。
未来コオロギスナック
未来コオロギスナックは「株式会社MNH」が販売している商品で、ラーメン味と食べやすい食品に仕上がっています。
タイのHISO(ハイソ)というメーカーから輸入しており、そのままお菓子として食べるのもよし、お酒のおつまみにもとても合います。
レビューには味も食感も普通のスナック菓子で、パッケージを見なければ全く気づかないと書いている人も。
未来コオロギスナックについては【未来コオロギスナックとは】話題のコオロギスナックについて調べてみたで解説しています。
コオロギチップス
出典:https://www.nomooo.jp/column/171900/
コオロギチップスは、高崎経済大学発のベンチャー企業「FUTURENAUT合同会社」が販売している商品です。
一般的なポテトチップスよりもたんぱく質が豊富で、脂質も85%カットされているためダイエット中のおやつにもおすすめ。
普段感触としてポテトチップスを食べている方は、コオロギチップスに変えてみてはいかがでしょうか。
コオロギチップスに関しては【コオロギチップスとは】コオロギせんべいとの違いや味を調査!で解説しています。
コオロギパン
出典:https://www.pascoshop.com/Page/LP/korogi/
コオロギパンは敷島製パン株式会社(Pasco)が販売している商品で、上記で紹介した「FUTURENAUT合同会社」との共同開発商品です。
コオロギを粉末状にしたコオロギパウダーを使用しており、炒ったナッツのような風味が美味しいパン。
コオロギフィナンシェも同時に発売されており、15時のおやつにコオロギを食べる日も近いかもしれません。
コオロギパンについては「コオロギパンは美味しい?密かに話題の「Korogi Cafe」について調べてみた」を見てみましょう。
コオロギプロテイン
出典:https://futurenaut.co.jp/cricket_powder/
最後に紹介するのは食品というわけでありませんが、多くの企業が商品化しているコオロギプロテインを紹介します。
コオロギプロテインには一般的なプロテインのように粉末状のものや、プロテインパウダーを使用したバータイプのものなどがあります。
砂糖を一切使用しておらず、ナチュラルな甘さを感じるフルーツフレーバーのため、とても食べやすいです。
コオロギプロテインは「EatGrub」のコオロギプロテインパウダーは筋トレに有効?なぜ今コオロギが注目なのかで解説しています。
どんな企業がコオロギを養殖しているのか
では最後に、日本ではどういった企業がコオロギを飼育・養殖しているのか確認しておきましょう。
気にしない方もいるかもしれませんが、やはりどこの企業が生産してくれているのか把握しておいたほうが、気持ちも楽だと思います。
BugMo
出典:https://bugmo.jp/
まず紹介するのはコオロギ養殖企業としては最大手の「BugMo」です。
「生きるためのおいしさを生み出す会社」というコンセプトで、主に養殖システムの設計開発やコオロギ食品の研究開発を行っています。
独自開発を行った養殖システムで、コオロギの旨味を最大限引き出しているのが特徴。
クラウドファンデイングで募集した「こおろぎだし」は、目標金額の120%を集める人気ぶりです。
出典:https://camp-fire.jp/projects/view/75859
ロボティクスとITによって管理された養殖システムは、品質面でも安心できるでしょう。
グリラス
出典:https://gryllus.jp/
日本のコオロギ養殖企業といえば「BugMo」と「グリラス」です。
世界最先端のバイオサイエンス技術が強みで、「フード」「ウェルネス」「アグリ(農業)」の3つの事業を展開しています。
フード領域ではより豊富なタンパク質を含むコオロギの生産や、ウェルネス領域ではコオロギ成分の化粧品などへの応用を研究しています。
一定の基準を満たした者しか出荷されないため、安心安全です。
グリラスについては株式会社グリラスとは?「コオロギ×テクノロジーを実現する」で詳しく解説しています。
こおろぎ牧場
最後に紹介するのは我らが「コオロギ牧場」です。
コオロギを飼育する際にお米や玉ねぎしか与えておらず、風味に最大限拘った生産が特徴です。
まだまだできたばかりの企業ですが、上記で紹介しているBugMoやグリラスに負けず劣らずの品質を確保しています。
より消費者に近い場所から、を念頭に置きつつ、もっとコオロギが一般社会に溶け込めるように取り組んでいきます!
コオロギは気持ち悪いけど、環境にも身体にも良いスーパーフードだった!
コオロギは正直気持ち悪いですが、環境にも身体にも良いスーパーフードです。
いきなりコオロギをまるごと食べるのは勇気が必要だと思うので、まずはコオロギせんべいなど、食べやすいものから挑戦してみてください。
大事なのはまず触れてみることです。
少し食べてみて、ちょっとだけでも地球環境へ貢献した自分を褒めてあげましょう。